石鎚山真言宗総本山
極楽寺教学部長
WCRP日本委員会青年部会幹事
村上 泰教

「慈しみの本質」

 「大切な人が亡くなり三年が経った。もう今更、悲しむのもね。ずっと大変だったから泣いてこなかったの。タイミングを逃してしまったから、もう辛いなんて言えないし、落ち込むのもおかしいでしょう?」

 このような言葉を聴くとき、厚かましくも、この方の三年間すべての気持ちを受け止めさせていただこう…などと私は思う。三年間、我慢してきた。孤独だった。これも他人事に聞いていれば自分の興味に則した疑問の投げかけに終始するのだが、相手の感情や目線に添った時、私は慈しみというものの本質から頬をひっぱたかれるような気持ちになる。相手を受け止める、相手に寄り添うということは、ただ自分の興味ごときで成せるものではないと。

 平成三十年七月豪雨災害よりは矢掛町(岡山県)や三原市・海田市(広島県)にて土砂運びや水に浸かった家財道具を片付けるボランティアをさせて頂いた。ある場所では、夜に起きた豪雨の翌朝には関東からボランティアが駆けつけてくれたのだと伺う。しかし同時にこのような話も打ち明けられた。「こっちはね、もうパニックなんですよ。急なことでね。何をどうしていいのか分からない。そんな時に助けてくれるって人の気持ちは本当にありがたい。でもね、色んなものを失った時に、助けてくれる人はね、悪い人では無いのだと思う。でもね、家の物を盗る気では無いのでしょうが、私のハサミを何も言わずポケットに入れているのを見るとね、気持ち悪くなってしまってね」。実際に何かを盗られたという被害は無かったようだが、非常事態時にこそ、私たちは相手の心情に添うことをより一層に心がけなければならないのではないだろうかと思うのである。

 二月より倉敷市真備町の寺院にて傾聴ボランティアを開始した。三月よりは施設や仮設住宅にて同様にお話を聴かせて頂く。話し始めに結構お金の話の多いことに驚くのだが、家を無くしているのだ。補償、手続き、生活に結びついた直近の問題がまず話題になるのは当然である。その後に自分の気持ちについて少しお話をされる方もある。帰り際、こう話された。「好きなことが言えて良かった。私たちはね、もっとあの時のことが話したいのよ。なかなか言える時が無いからね。聴いてくれる相手がいるのは嬉しいわ」

 私は、誰にも何も言えず年月を送る方が一人でも少なくなるよう、できることをしたいと思うのである。助け合える人間を育みたい。皆様にも手の届く範囲、誰かの孤独に寄り添っていただければ幸甚に存じます。


(会報3月号より)

 

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