2018/07/11 | ISによる大虐殺の悲劇を訴えるヤズディ教徒代表らが初来日 |  | by 事務局 |
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特別学習会「ヤズディ大虐殺を知る」が7月10日、普門メディアセンター(東京都杉並区)で開催され、これに約70人が参加。和解の教育タスクフォースの招請で初来日していたイラクの少数民族ヤズディ教最高評議会会長のブリーン・タフシーン師とヤズディ教徒の心的外傷(トラウマ)治療に取り組んでいるカラフ・メルザ博士が、IS(イスラム国)による迫害と虐殺の悲劇を訴えた。
ヤズディ教の歴史は古く、イスラームの教えをもとにゾロアスター教や古代ペルシャの宗教、キリスト教など様々な宗教を取り込み、教義は口承で形成されてきた。また、改宗を認めないなど固有の文化を堅持し、ムスリムから異端・邪教の烙印を押され、これまでに何度も侵略や虐殺を受けた。
現在、ヤズディ教徒(およそ50万~100万人)の多くはシリアやトルコ国境に近いイラク北西部の山岳地帯に居住し、クルド語を話す。イラク国内のほかにもシリア、トルコ、アルメニア、ドイツ、アメリカ、ロシアなどで小さなコミュニティを形成し、情報を交換し合っている。
特別学習会でタフシーン師らは、こうしたヤズディ教徒の歴史を紹介した上で、2014年8月3日、当時イラクで勢力を拡大していたISが、ヤズディ教徒の多くが住むシンジャールに侵攻し、大虐殺が起きた惨状を報告。
一日で約1300人が殺害され、ヤズディ寺院や病院などはすべて破壊されたという。その後、「約6000人以上の女性や子どもが誘拐され、性奴隷や少年兵にされて、いまも半数が行方不明」と語った。
トラウマを受けた女性や子どもも多く、その対処としてドイツで医療プログラムを施しているが、カウンセリングに携わっているメルザ博士は、「シンジャールには医薬品がなく、ライフラインも破壊された。
イラク国内の17の避難キャンプに16万8千人余のヤズディ教徒が生活しているが、キャンプに入れない人も多くいる。彼らは劣悪な状況に置かれ、治療を受けられない子どもたちは非常に悪い状態にある」と述べた。
二人は、この状況を世界に訴えており、現在、米国、カナダ、EU加盟諸国などが大虐殺を認定したという。メルザ氏は、「誰かが私たちのことを考えてくれているというだけで幸せを感じる。新しい土地がほしいわけではない。我々の生活を保護してもらい、安全に暮らしたいだけ」と語った。
タフシーン師は、「ぜひ、日本のメディアに大虐殺のことを取り上げてもらいたい。そして日本政府にはヤズディ教徒の女性や子どもに力を貸してもらいたい」と訴えた。
(会報8月号より)