先日、ある講演会で依存症を「つながり」や「関係性の欠如」の観点から話をされている岩室紳也先生という方の講演を聞きました。岩室先生は公衆衛生医、泌尿器科医の立場から厚生労働省の健康づくりに関する研究班のメンバーとして活動されているだけでなく、薬物依存患者の支援や性教育に関する講演会を全国で行うなど幅広く活躍されています。ホンマでっかTVにも出演されている先生ですが、お話をするととても気さくな方です。
先生方は、依存症を自己責任の病気と思っていますか?薬物依存やアルコール依存は意志が弱いその人の特性が原因であるとお考えですか?戦場で麻薬を使い続けているアメリカ兵は、家族のもとに戻ると一切使わなくなるそうです。根本原因は、それを使わなければならない状況であり、その依存状況を断ち切るのは、安心できる人とのつながりなのではないでしょうか。薬物依存などさまざまな依存症を抱えている人々の多くが社会からの孤立、つまり、かかわり・つながり・支え続ける存在が無いことによって依存症から抜け出せないでいるのではないでしょうか。
このことを岩室先生自身のダイエットをした経験と絡めてお話されていました。13年前、90センチのメタボ体型だった岩室先生が、これまで思っていてもなかなかできなかったのですが、あるとき、久しぶりに会った保健師さんに「先生顔変わりましたね。醜くなりましたね。」と言われ、「あんたに言われたくないよ」と思い一念発起して、12キロの減量に成功したそうです。岩室先生自身に足りなかったものは何か?それは、知識でも意志でも生きる力でもないです。岩室先生は医師であり、ヘルスプロモーション推進センター長で、奥さんは保健師をされています。知識やスキルは十分です。やはり、誰かとつながり心響く経験がないときっかけは生まれないのではないかと実感したそうです。
知識だけでは生きる力は育めない。この言葉を聞いて、ますます、アクティブラーニングを通して、リアルな関係づくりや安心して失敗できる居場所を見つける力を育てる必要があるのだろうと感じました。文科省が知識や技能だけではなく、学びに向かう人間性ということを柱にしてきた理由もここにあるのだろうと思います。先生方はどう感じられましたか?
追記
「学校で育てたい力」についてのアンケートに回答していただきありがとうございます。結果をまとめて、タイムズに載せようと考えていたのですが、河村先生から、折角なら先生方の考えを共有する機会を設けてはどうかという提案をしていただきました。アクティブ授業の一年間のまとめに加えて、来年度の方針を考える機会としてワークショップを行いたいと考えています。その際に、今回、回答していただいた考えをもとに議論をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。