2018/10/09 | 10月9日(火)自分の「係」「役割」 |  | by 日進中学校管理者 |
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親愛なる日中健児のみなさんへ!
みなさんは、日進中学校で「本当に」いい子です。
昔の「私」や、昔、日進中学校にいたころの「生徒」を考えると・・・・・・。
涙が出てくるくらい「いい子」です。
その「大人から見て」いい子について心に滲みた話がありますので、紹介します。
西加奈子の短編小説『孫係』の主人公は「すみれ」という小学6年生の女の子である。
すみれは、家庭でも学校でもとても「いい子」で、友だちにも優しい子だった。
ただ、当の本人は自分のことを「卑怯で冷たい嫌な子」と思っている。
「自分はただ『いい子』に振舞っているだけ」という自覚があったのだ。
仲のいい友だちと朝から放課後まで一緒にいる時などはしんどくても絶対顔に出さなかった。
そんなすみれに、自分の冷たさがさらに浮き彫りになる出来事が起きた。
地方で大学教授をしている祖父が、仕事の関係で1か月ほど東京にあるすみれの家に
住むことになったのである。
祖父は優しい人だが、すみれは遊んでもらった記憶がない。
年に数回しか会わないのなら何の問題もないが、
1か月も一緒に住むと思うと気が重くなった。
実際、すみれにとって祖父のいる我が家は住みにくいものになった。
洗面所で鉢合わせすると「ひっ!」と言ってしまうし、夕食の時は作り笑いをしてしまう。
口では「一緒に住めて嬉しい」と言っているのに、心の中では「あと何日」と思っている。
そんな自分にまた嫌悪感を覚えるのだった。
ある日、帰宅すると誰もいなかった。
つい「あぁ一人になりたいなぁ」とつぶやいた。
その時、祖父の部屋から音がした。
「まずい。聞かれてしまった」と思った。
そんな孫の気持ちを察した祖父は、部屋から出てきてこう言った。
「私も一人になりたいです」。
そしてこうも言った。
「すみれさんは私たちと似てますね」
祖父の話によると、祖父と3年前に亡くなった祖母は、二人だけの時、よく悪態をついていた。
仲のいい友だちの悪口を言うこともあったという。
すみれは耳を疑った。
彼女にとって二人は上品で、素敵で、理想的な祖父母だったからだ。
祖父は、「この家にいると疲れます」とか「孫なんて可愛いと思ったことないんです」
とも言った。すみれは吹き出した。
そして孫にこんな提案をした。
「あなたは『孫』という係、私は『爺』という係を、この1か月、きちんとつとめあげませんか」
「係」という言葉にすみれの目が開いた。
祖父は言う。
「私たちはみんなこの社会で何らかの係を与えられているんです」
「友だちに優しくするのは『友だちに優しくする係』をきちんとこなしているのです。
決して相手を騙しているんじゃない。
相手を思いやる気持ちからです」
「『いい子係』をこなすのは涙ぐましい努力です。それは『いい子』のふりではなく、
本当に『いい子』だからできるんですよ」
祖父の言葉は、すみれの心に沁みた。
それまでの悩みが吹っ飛んだ。
その日から二人はそれぞれの「係」をこなして、仲のいい爺と孫の関係になった。
そして「夕方二人で犬の散歩をする時だけ悪態をついていい。
それ以外は絶対人の悪口は言わない」というルールを決めた。
同じような話を先週、吉井奈々さんのコミュニケーション講座で聴いた。
吉井さんは元男性だ。長年新宿二丁目で培ったコミュニケーション術を、
今学校や企業研修で伝えている。
吉井さんは言う。
「最初から咲いている花がないように、最初から輝いている人はいません。
種に土や水や光が必要なように、人にも承認とほめ言葉と役割言葉が必要です」
「承認」とは、「あなたはあなたのままでいい」と、存在そのものを認めること。
「ほめ言葉」とは、今見えている魅力を相手に伝えること。
そして「役割言葉」は吉井さんが作った言葉で、「こうなってほしい」という相手の
「未来の可能性」をプレゼントする言葉なのだそうだ。
「優しいね」とか「思いやりがあるね」「頼りになるね」「しっかりしているね」「努力家だね」等々。
「人は与えられた役割を無意識に演じる習性を持っています」と吉井さん。
そういえばあの大学教授もこんなことを孫に語っていた。
「人は、その係に合った人間に近づいていくんです」
この文章を読んでいて、涙が出てきました。
先日も「孫」の話をしましたが、小さな子どもなりに今日も一生懸命「母親の実家で、
健気に『いい孫』を演じようとしています。しかし、まだまだ、小さな子どもです。
ついつい、「ママ~」と出てきてしまいますが、
「承認」「ほめ言葉」「役割言葉」を語ってあげたいと思っています。
今、学校現場でも「いい子を演じている子」がたくさんいます。
「いい子を演じる」ことが悪いのではなく、
すべての人には自分の「係」「役割」というものがあります。
それはそれで大切にしながら、「あなたはあなたのままでいいんだよ!!」
いつも、私たちは「そう思っています!!」
がんばれ!!日中健児!!