2018/06/11 | 6月11日(月)みやざき中央新聞 |  | by 日進中学校管理者 |
---|
戦中戦後、「父親たち」は常に時代に翻弄されてきた。
戦時中は紙切れ1枚で戦場に駆り出され、終戦直後は家族を食べさせるために
必死で働いた。
高度成長が始まった
1960年代、市場を海外に求めた「父親たち」は、諸外国から
「エコノミック・アニマル」と批判され、
70年代には「ワーカーホリック(仕事中毒)」と揶揄された。
何と言われようと働けば働くほど会社も個人も豊かになる時代だった。
働いて稼ぐことで父親の威厳は保たれた。
80年代、家庭から「父親たち」の気配が消えた。
夫に「父親」としての期待を諦めた妻たちの気持ちを殺虫剤のCM
「亭主元気で留守がいい」が代弁した。
一方、「24時間戦えますか」という栄養ドリンクのCMはさらに「父親たち」の背中を押した。
90年代、バブル経済崩壊後、「リストラ」の嵐が吹き荒れ、「父親たち」の威厳は失墜。
残業がなくなり早く帰宅できるようになったが、家庭に父親の居場所はなかった。
父親の洗濯物と家族のものとを別々に洗う主婦が話題になったのもその頃だ。
そして90年代が終わる頃から中高年男性の自殺が急増し、
その社会現象は2011年まで続いた。
森浩美の短編小説『小さな理由』(双葉社)にはそんな切ない「父親たち」が描かれている。『いちばん新しい思い出』の主人公・佐藤もその一人だ。
「バブル」の時にはその経済力で家庭を維持できていたが、「バブル」が弾け、
会社が傾き始めると同時に家庭も崩壊した。
離婚したのは1人娘の香織が10歳の時だった。
その娘から突然電話が掛かってきた。
「今度の日曜日、遊びに行ってもいい?」と。
25歳の大人の声だった。15年ぶりに父娘は再会した。
母親には内緒で来たという。
「誰に電話番号を聞いたんだ?」と尋ねると、「15年前、家を出る日の朝、お父さんが
『困ったことがあったら電話しなさい』と言って、携帯番号を書いた紙切れをランドセルに
入れてくれたでしょ」と娘は話した。
その紙切れをずっと持っていたそうだ。
娘は、父親と別れた後のことを話し始めた。
中学時代のこと、新しいお父さんができたこと。
その人からとてもよくしてもらったことなど。
昼食を挟んで、娘は「結婚するの」と切り出した。
一瞬、佐藤はバージンロードを娘と腕を組んで歩く姿を思い浮かべ、
「タキシードを買わなきゃ」と思ったが、次の言葉でその思いは打ち砕かれた。
「ごめん。式にお父さんを呼べないの」。
佐藤は「そりゃそうだ」と思い直した。
娘は「頼みごとがある」と言った。
「小学生の頃、作文が苦手で、よくお父さんから手伝ってもらったよね。
式の最後で読む親への感謝の手紙を書いたんだけど、今から読むのでおかしいところ
があったら直してほしい」と。
「感謝の手紙か。じゃあ練習に付き合ってやる」、そう言って正座し目を閉じた。
娘は読み始めた。
「本当のお父さんへ」と。
「えっ!」と佐藤は思った。
手紙には、幼かった頃、父親と一緒に遊んだ思い出がたくさん綴られていた。
それからお母さんと新しいお父さんとの間に妹ができた時、とても不安になったことや
「いい子にしていないと捨てられるのではないか」と思ったことも。
「本当は3人で暮らしたかった。どうして我慢してくれなかったの」とか
「2人が喧嘩を始めると居たたまれず自分の部屋で耳を塞いでいた」という恨み言も
書かれてあった。
そして「お父さんのことが好きだった。でも式に出てもらえない。本当にごめんなさい…」。
嗚咽で言葉が出なくなった。
佐藤もまた声を絞り出した。
「分かってる。どこも…直すところはないよ」と。
あの時代、「家族を大切に」とか「夫婦のコミュニケーションが大事」なんて言う人は
ほとんど周りにいなかった。
死に物狂いで戦うか、気が抜けたように萎(しぼ)むか、なかなかしなやかに
生きられなかった昭和の父親たち。
そんな父親に思いを馳せてみよう。
6月17日は父の日だ。
現代は、「父親だけでなく、多くの母親も仕事を持っています!」
どのように家庭を大切にするのか?
だれもが、「どうでもいい!?」なんて思っていません。
父親としても、母親としても「家族、家庭」を大切にできる体制づくりは急務なのかも
しれません。
私自身も、学校教育、部活動に明け暮れ「あまり家庭のことは・・・・・・」という
反省をしています。
よく職員には言いますが、「仕事は生き甲斐にはなるかもしれませんが、
面倒までは見てくれませんよ!!」と・・・・・。
仕事があるうちは「気が紛れて??」いるのかもしれませんが、
仕事がなくなったら「残っているものが・・??」では、人生的にはどうなのかな?と思います。
これからの「父親」「母親」を考えてみるのも「父の日」には必要なのかもしれませんね。
働き方改革!!と言われていますが、「幸せを求められる改革」にしてほしいものです。
現在の「子育て世代」を見ていて、「何とかしなければ・・・・」
そして、少しでも「働きやすい職場に」と考えているのは私だけではありません。
政治に振り回されることなく、
ともに、頑張りましょう!!