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2019/08/27

8月27日(火)みやざき中央新聞より

Tweet ThisSend to Facebook | by 日進中学校管理者
書く、配達する、受け取るという風情
魂の編集長 水谷謹人
 中学3年生を対象とした全国学力テストの国語で、「封筒に宛名を書く」という問題が出たそうだ。その正解率が57.4%だったということで、ちょっとした話題になっている。
  その問題は「全国中学生新聞」の「声の広場」に郵送で投稿するというもので、宛先の住所やFAX番号、メールアドレスも示されていた。条件は「封筒に縦書きで書くこと」と「個人宛ではないので『御中』の文字を入れること」となっていた。
  結果、住所が封筒の真ん中に書かれてあったり、「御中」の文字が「全国中学生新聞『声の広場』係」の上にあったり、住所の横にFAX番号やメールアドレスまで書き込んだ解答が数多くあったという。
  メディアは「電子メールの普及で手紙を書く機会が減った社会風潮を反映している」とコメントしていた。
  先週、千葉県市川市に出張し、いろんな人とお会いした際、偶然にも手紙の話題になった。
  ㈱グランパの創業者で、「絵手紙やってみ隊」の隊長・伊藤良男さんは以前、友人の短大教授から頼まれて「絵手紙」の講義をした。教室には25人の学生がいた。「年賀状を書いている人?」と質問したらゼロだった。「最近手紙を書いた人?」と聞いたら2人いた。誰に書いたのかを聞くと、共通していた。祖母だった。手紙を誕生日の贈り物に添えたという。
  また小学校の先生から、日本郵便㈱が「手紙の書き方体験授業」を支援しているという話を聞いた。それに申し込むと全校児童・生徒にハガキがプレゼントされるという。
  その先生は1年生の担任だ。ちょうど国語の教科書にアーノルド・ローベルの『おてがみ』が掲載されている。登場するのは2匹のカエル、「がまくん」と「かえるくん」。がまくんが「ぼく、おてがみをもらったことがないんだ」と悲しそうに言う。それを聞いたかえるくんは急いで家に帰り、がまくんに手紙を書く。そして再びがまくんのところに行き、手紙が着くのを待つがなかなか来ない。配達を頼んだのが「かたつむりくん」だったのだ。届くまで4日かかった。そんな物語。
  この授業をした後にハガキを配る。表の真ん中に自分の名前を書く。その子の住所は先生が教える。ハガキを一旦回収し無作為に再配布する。それをもらうと宛名の子にメッセージを書く。ハガキは表も裏も全部平仮名だ。それを先生がポストに投函する。
  こんな授業をしていくと、手紙を書く楽しみ、もらう喜びを感じると共に、冒頭に紹介した間違いもなくなるだろう。
  考えてみれば、郵便制度はすごい発明だ。わずかな切手代だけで国内どこにでも届けてもらえる。
  郵便輸送は17世紀のイギリスで始まった。当時は手紙の書き方など誰も知らないので、その手の本が売れていた。
  印刷業を営んでいたサミュエル・リチャードソンも「手紙の書き方」の本を出版してひと儲けしようと企んだ。しかし実用書として書いてもつまらないと思い、小説にした。1740年のことだ。
  15歳の田舎娘がロンドンの貴族のお屋敷に女中として雇われる。そこで起きた出来事を逐一田舎の両親に手紙で伝える。読者は小説を読みながら手紙の書き方を学んだ。娘の名前は「パミラ」。それがそのまま本のタイトルになった。
  そのお屋敷の息子は女癖が悪く、今で言うセクハラ的な行為をパミラにしてくるが、パミラは頑として拒否し続ける。そのことも全部手紙に書いた。読者は次第に手紙の書き方はどうでもよくなり、この2人の関係は今後どう展開していくのか、ハラハラドキドキしながら読み進めたそうで、これが全英で大ヒットしたという。
  この『パミラ』が小説の元祖で、著者のサミュエル・リチャードソンは「近代小説の父」といわれているとか。
  世の中はどんどん便利になっていく。しかし、「書く」「配達する」「受け取る」、この風情は次世代に残したいものである。

学校現場にいると、「本当の便利?進化?豊かさ?」とは何なのだろう?
と考えさせられることが多くあります。
しかし、人間は「便利さ」「効率的」「豊かさ」を追い求めています。
「本当の・・・・・」
「本当?」って難しいですね。
みんなで考えていきたいものです。

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