脳医学者 瀧靖之 氏の講演より
最近の研究で明らかになってきたことがあります。
それは、「幸せな人は長生きする」ということです。
これまでの医学は、人の内面を研究対象として扱ってこなかった歴史がありますが、近年は人の内面に研究分野をどんどん広げています。
その中の一つに「幸せ」があります。幸せを医学の世界では「主観的幸福度」と呼びます。「主観的」というのがポイントです。ささやかであっても自身が「幸せ」と感じることが大事なのです。
主観的幸福度が高いということは、健康にリスクを与えるストレスレベルが低いということです。ストレスレベルが低いと、動脈硬化症や、高脂血症、糖尿病などの発症リスクが下がるのです。結果的に寿命が延びる。このようなことが分かってきました。
ですから、やはり「人生は楽しい」「自分は幸せだ」と感じることは、健康や寿命に影響するということです。
人の内面について、ほかにも次のような研究結果があります。
子どもが感謝、思いやり、日々楽しいと思う気持ち、こういうものを持つと、それが自身にプラスの影響を与え、その結果主観的幸福度を高め、ストレスレベルを低下させます。
また、親のストレスレベルが低いと、子どものストレスレベルも低くなります。逆に、親のストレスレベルが高いと、子どものストレスレベルも高くなることが分かりました。
ここから「親が幸せだと子どもも幸せになる」ということが見て取れます。
私の専門分野は認知症です。認知症にならないためにはどうしたらいいかということを、これまで16万人以上の脳画像を見ながら考えてきました。
すると、認知症の研究から「子どもの好奇心」の大切さが分かってきました。
歳を取っても仕事に趣味にボランティアにとイキイキと活動している方というのは、小さい頃からの好奇心を維持している方が、本当に多いのです。
認知症の予防に効果があるのは、①運動②コミュニケーション③趣味や好奇心の三つです。
③の趣味や好奇心を持つことは、子どもの将来にわたる脳の健康にも関わってきます。でも、それだけではないのです。
子どもが好奇心を持って、何か一つでも趣味を持つと、「人生が広がる」のです。
私はピアノを弾くのが趣味です。学会で海外のホテルに行くと、ピアノが置いてあって自由に弾くことができます。
私がそこで弾いていると、学会の参加者も弾いたりします。それがきっかけでコミュニケーションを取って仲良くなって、名刺交換をすることがあります。そうすると、相手が脳医学の第一人者で、その方とお知り合いになる機会に恵まれたことがありました。
普通では知り合えない方と、趣味を通じて出会うことができる。世代・立場・国を超えて知り合うことができる。言ってみれば『釣りバカ日誌』のハマちゃんとスーさんのような関係になれるんです。
子どもが趣味を持つのは、まさに「芸は身を助ける」になるのですね。
どんなに健康な人でも、歳を取れば脳は老化し、さまざまな能力が低下していきます。
しかし、幼い頃から好奇心が高い人ほど、歳を取ってからの脳の老化速度が遅いのです。
好奇心が旺盛な人は、歳を取ってからも人生を楽しめる人、といえるでしょう。
「(主観的幸福度が高い)幸せな人は、そうでない人と比べて10年近く長生きしやすい」という海外の研究者の報告もあります。
ですから、皆さんには最後に「好奇心には人生を変える力がある」とお伝えして終わりたいと思います。
まったく、その通りだと思います。
「長生き」の秘訣は、「検査」でもないし「薬」や治療」でもないし、
基本的には「ストレスレベル」が低い生活。
言い換えれば、「どんな小さなことでも、前向きに考えられ、幸せを感じられる」
そんな「考え方のできる人」のことだと思います。
世の中で起きていること事実は「一つ」。
それを「どう考え」「どう捉え」生活をしていくのか??
幸せに感じられる人が、長生きするに決まっていると思うのですが・・・・・・。
みなさんは「どう思われ」ますか?