先週の水曜日のことである。七転八倒の末、遂に立花萬平が「お湯を注ぐだけで食べられる即席ラーメン」の開発に成功した。
それまで、「どうしたら常温で保存でき、食べたい時にすぐ食べられる麺になるか」を模索していた。天日干ししたり、陰干ししたり、塩漬けにしたり、何をやっても失敗の連続だった。
ある日、妻の福子が夕食にてんぷらを揚げているのを見て、麺を油で揚げることを思いつき、それが成功につながった。
何の話かというと、現在放送中のNHKの朝ドラ『まんぷく』である。いよいよ物語は佳境に入った。
チキンラーメンやカップヌードルという全く新しいラーメンを発明し、世に送り出した日清食品の創業者・安藤百福と、その妻・仁子の半生をモデルにしたこのドラマは、初回から高視聴率をあげている。
多くの日本人にとってチキンラーメンは、物心付いた時から身近な存在だったが、「これはどうやってできたのだろう」なんて、考えながら食べた人はいなかったのではないだろうか。そこにこのドラマは着目した。
即席ラーメンづくりに熱狂する萬平に対して、「そんなもの誰も求めていないじゃないか」「ラーメンを食べたければラーメン屋に行けばいいじゃないか」等々、周りの親しい人たちの反応は冷ややかだった。
つまり、あのラーメンは消費者のニーズがあったから生まれたのではなく、誰も欲していないものを生み出して新たな価値を創造したものだったのだ。
萬平のものづくりの根底には「成功してお金持ちになりたい」ではなく、「世の中の役に立つものを作りたい」という思いがあった。きっと百福もそんな男だったに違いない。
ドラマの中では触れられていないが、百福が生まれたのは台湾中部の「嘉義」という地方都市である。当時は日本統治下だったこともあり、百福は日本語教育を受けて育った。日本に渡ったのは成人してからだそうだ。
野嶋剛著『タイワニーズ~故郷喪失者の物語』(小学館)によると、元々台湾には麺を油で揚げて調味料をまぶし、お湯をかけて食べる「ジースーミェン」という即席麺があるそうだ。
その本の中で野嶋さんは「チキンラーメンの発明の背景には故郷の料理がヒントになっていたのではないか」と推測している。
いずれにせよ、「立花萬平」が台湾出身という設定だったら、このドラマを機にもっと台湾との交流や親善が今以上に進んだのではないかと思うと、少し残念な気持ちになる。
さて、大衆や社会が求めていないものを創る。これを「価値創造」という。世の中の大ヒット商品の多くは、消費者のニーズに応えて生まれてきたというより、誰も考えなかったことや欲してもいないことを創り出し、そこに価値を付けて世に出たものが圧倒的に多い。
たとえば、ソニーの「ウォークマン」。スピーカーのない音響機器を誰が欲しただろうか。しかし、その非常識な商品が消費者の意表を突き、大ヒットした。
また、コンパクトな電話機を一人一台持ち歩くことが大流行している時代に、コンピュータを搭載したスマートフォンが登場し、世間を驚かせた。「電話」というカテゴリーを逸したものだった。
大衆が求めたものではない。創られた新しい価値に大衆が飛びついたのだ。そんな商品は枚挙にいとまがない。
そして、これからの時代の価値創造において、最も注目すべきは「あなた」自身だ。世の中が求めているわけではないが、価値を創造することで、「あなた」は今以上に世の中の役に立つ存在になる。
自分の価値創造は人生の目標そのものだ。「ものづくり」だけに熱狂するのではなく、自分自身にも熱狂し、その価値を高めるのだ。時代は遂にここまで来た。
価値を創造することで、「あなた」は今以上に世の中の役に立つ存在になる!
自分の価値創造は人生の目標そのものだ!
「ものづくり」だけに熱狂するのではなく、自分自身にも熱狂し、その価値を高めるのだ!
とても良い言葉ですね!!
そんな大人に自分もなりたい!!