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2020/01/09

1月9日(木)日本購読新聞より

Tweet ThisSend to Facebook | by 日進中学校管理者
「染めない」という選択肢のこと~新しい時代に求められる「自分らしさ」
フリーアナウンサー 近藤サト
 私は現在51歳です。白髪染めをやめて「グレイヘア」にしてから、もう11年経ちました。
  今回お話しするのは「白髪を染めないという選択肢もあるよ」ということです。「白髪染めをやめよう」というお話ではありませんよ。

  まず、私がグレイヘアにしようと思ったきっかけからお話しします。
  20代後半から白髪が目立ち始めた私は、かなり早い時期から白髪染めを始めました。ただ、アレルギーをたくさん持っていたので、当然頭のかゆみや湿疹に悩まされました。
 でも「白髪交じりの頭で人前に出るなんて考えられない!」と思って必死に染めていたんです。
  「いつかやめたい」と思っていた矢先、東日本大震災が起こりました。そこで改めて防災や避難について考えた時、「災害が起きて染められなくなったら、どうしたらいいんだろう。そうだ、薬局で毛染め剤を買って、防災用品の中にそれを入れておこう」とふと考えたんです。そして直後に「私はあほか」と思ったんですね。
  「どうして生きるか死ぬかの時にまで白髪染めに追い込まれているんだろう」と、立ち止まることができたのです。

  結局、40歳から自然なグレイヘアでやっていこうと決意したわけですが、髪の毛って大体1か月に1センチくらいしか伸びませんよね。
  ですから最初のうちはてっぺんから5センチぐらい白く、あとは真っ黒な状態です。富士山の初冠雪みたいでした(笑)。
  白髪の根元が5センチほど伸びていた時、そのままテレビに出ようとしたことがありました。そうしたらスタッフが毛染めのスプレー缶を持って飛んできて、「サトさん、任せてください」ってプシューと髪に吹きかけられたこともありました。
  そんなことも体験しながら、グレイヘアになりかけの状態を2年くらい通し、ようやく全体がグレイヘアになった私がお茶の間に放送されました。
  当時、SNSやネットの掲示板がかなりざわつきましたね。「どうしたんだ、近藤サト。何かつらいことがあったのか」と。
  同時にいろんなメディアが取材に来ました。その中でとある女性記者に、「なぜサトさんは40代にして女性らしさを捨てようと思われたのですか?」と聞かれたことがあります。
  さすがに「えっ?」と思いましたね。時代の変化を最前線で捉えるメディアに身を置く女性であってもそう考えてしまう…つまり、「女性らしさ=若く美しく見えること」という意識が社会の深いところに組み込まれている、と感じた出来事でした。

  私の知り合いに「サトさんにならってグレイヘアを始めてみました」と言う30代の女性がいました。
  でも、そのあとしばらくしてその方から相談を受けたんです。「直接的にではないけれど、染めるよう言われた」と。
  その方は営業職でした。取引先に行こうとしたら、上司に「その髪で営業先に行くのはちょっと失礼じゃないか?」と言われ、すごく落ち込んだというんですね。
  私はそのとき、「頑張ってグレイヘアを貫いてください」とは言えませんでした。「可能であれば、もう1回染めましょう。まだあなたのいる環境の中では早かったのかもしれないですね」とお伝えしました。
  社会や家庭の環境はそれぞれ違いますから、誰しも同じようにはいかない部分、仕方ない部分というのはどうしてもあるんです。

  逆に、こんなこともありました。ある講演会の後、真っ黒な髪の女性が私のほうにとことこ歩いて来たんです。「サトさん、私もそろそろ白髪出したほうがいいのかしら」と仰るので、お年を聞いてみたら、なんと90歳!
  「ぜひそのままでいてください。あなたは『染める』派の先頭に立つ方です。100歳になっても真っ黒な髪で、70歳くらいにしか見えない女性もひとつのお手本になりますから」と彼女には申し上げました。
  グレイヘアが出てきたことによって「染めちゃいけない」という風潮になったわけではありません。「染めない」という選択肢も前に出てきた、というだけなんですね。

  多様性の時代と言われる現代では、「男らしさ・女らしさ」という普遍性ではなく、「自分らしさ」について考え、人生を歩んでいく必要があります。
  そして、その「自分らしさ」は日々変わっていいと私は思っています。皆さんの人となりは、最終的には「何を選択してきたか」で決まるからです。あの人はこれをやった人、こうすることを選んだ人というのがその人「らしさ」になってくるのです。
  私がグレイヘアにしたのも、その「選択」です。白髪染めに限らず「自分らしさ」につながる新しい選択肢を見つけられるのはとっても素敵なことですし、そういった方はいつまでも生き生きとした人生を送っていらっしゃいます。
  白髪だって白髪じゃなくったって、自分の生きたいように生きている姿を若者たちに見せること。それが新しい時代の日本、そして世界をつくっていく世代に対する大きな役目なのではないでしょうか。

親愛なる日中健児のみなさん!!
私もこの歳になって「自分らしさ?」と考えることがよくあります。
まわりから言われる「あなたらしさ?」と自分が思っている「自分らしさ?」
同じ場合はいいのですが、意外と「違っている」場合が多いようです。
しかし、「自分らしさ」を自覚し自信を持つことは、人生を豊かにしてくれると
思います。
ぜひ、今からでも遅くありません。
「自分らしさ」「自分の長所」「自分の強み」などに
ついて考えてみてくださいね!
よろしく!!日中健児!!

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