先生方は、平川理恵さんという方をご存知ですか。平川理恵さんは、リクルート入社後に独立起業し、2010年公募で横浜市の公立中学校の民間人校長となり、昨年4月から、広島県の教育長をされている方です。校長に就任して2校目の中川西中学校では、学校改革を行い、不登校生徒が30人から1人に減ったことなどが知られています。
不登校対策としては、フリースクールのような場をあえて学校の中に作るということを行っているそうです。例えば週休4日制の子もいれば、午前中は来ずに午後だけという子もいて、登下校の時間や勉強する科目は生徒自身が自分の学力や体調に合わせて決めていくということです。本校でも、不登校傾向の生徒と相談しながら個別にやってきたことに近いのではという印象を受けますが、おそらく大きな違いは、「教室で一斉授業を受ける」という「本来の姿」が前提としてあって、通学したときにその都度どう過ごす?という時間の使い方ではなく、自分の興味関心に基づいて、その教室に入る前から主体的にああしたい・こうしたいいう前向きな気持ちと、見通しを持って各自で計画を立てることが尊重されるという点が違うのだろうと思います。私の知人の大学教授の話では、オランダでは、幼稚園児も登園後、その日のスケジュールを園児たち自らが立て、そのスケジュールに従って一日を過ごすそうです。みんなで同じことをやることも残していきたい学校の文化ですが、生徒が個々に自分の特性や学力の違いを踏まえて、日々の学習を自己決定していくことがスタンダードになっていくと、答えなき時代に自分の道を切り開いていける子どもたちが育っていくのかなと感じます。
また、広島県の教育長に就任してから受けた、広島県が目指す「主体的な学び」とはというインタビューの中で、その理念を具現化するために、県内の公立中高一貫校に国際バカロレア(以下、IB)・ディプロマプログラムを導入しようとしていることを述べていらっしゃいます。IBとは、世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生の教育プログラムのことで、国際的な視野を持った人材を育成するため、生徒の年齢に応じて4つの教育プログラム(PYP、MYP、DP、CP)のいずれかを導入している学校が国際バカロレア認定校となります。そのプログラムの一端について平川さんは、「従来型の日本の教育では、たとえば理科の実験に対して事細かく安全配慮義務が定められています。ところがIBでは、最初にある程度の知識を与えるものの、あとは生徒が自ら計画を立てて実験を行います。そうすると、当然失敗も起こるわけですが、IBはその失敗に備えた設備を求めてきます。たとえば、薬品が目に入ったときにすぐ洗い流せる設備が必要となるのです。つまり、子供たちが失敗することを前提に設計されており、失敗を通じて深い学びを得られる仕組みになっているのです。」とおっしゃっています。近頃の日本では、大人が先回りをして、子どもたちに失敗させないようにしていますが、国際的に必要とされるのは、何度失敗してもトライするその姿勢を持った子どもたちなのだということを感じます。