2020/09/11 | 【日進中】9月11日(金)みやざき中央新聞 | | by 日進中学校管理者 |
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「畏れを抱く。人間の分際なのだから」 魂の編集長 水谷謹人 より
新しい考え方が制度化されても、それが世に根付くまで随分な時間を要するものだ。場合によっては世代を越えることもある。昨今、「女の分際(ぶんざい)で…」という言葉を吐く男はすっかりいなくなった。
この言葉は「誰のおかげでメシが食えていると思っているんだ」という意識とセットになっていた。昔ながらの男尊女卑の風習と、稼いでいる人間が偉いという価値観が相まって、経済的に自立していない女性に向けられていた。今では映画やドラマの中でしか聞けない言葉かもしれない。今こんな言葉を使おうものなら世間の反発を買うどころか、その意味さえ理解されないだろう。
少し前に参加したビジネス系のセミナーでは、男性の講師が「男の分際で…」という話を始めたので驚いた。
「男性の中にはごく稀に男の分際で女性に手を上げる奴がいる」と言うのだ。
「どんなに偉いか知らないが、女性の胎から生まれたくせして、しかも人間として自立していない頃には、その乳を飲み、おしめを替えてもらい、その腕(かいな)に抱かれて過ごした日々があって『今』があるはず。そんな男の分際で女性を大事にせぬとはとんでもない」と。
「分際」とは「身のほど」という意味である。そこにはあからさまに「軽蔑」の気持ちがある。しかし、男性が自分たちを戒める意味で「男の分際」と言うと、何となく共感できる人も多いのではないだろうか。
そんな話を聞いたばかりだったので、書店に並んでいた『人間の分際』(幻冬舎新書)という背表紙に目が留まった。
著者は作家の曽野綾子さん。曽野さんが過去に執筆した小説やエッセイの中から人生の奥義のような言葉を編纂(へんさん)した本だ。終始「人間の分際」について書かれているわけではないが、ただこのタイトルが妙に心を揺さぶった。
曽野さんの言う「人間の分際」には軽蔑の意味はない。「身のほど」は、すなわち「身の丈(たけ)に合った生き方」ということらしい。器の大きい人は大きな仕事をすればいいし、小さい人は自分に合った仕事をすればいい。それがその人の幸せにつながるというのだ。
昔、東京オリンピックで、女子バレーボールチームを金メダルに導いた監督が「為せば成る」と豪語していた。それを聞いて曽野さんは「私は騙されないぞ」と思ったという。
「みんながみんなそうじゃない。必死に努力した結果、確かに成せる人もいれば、成せない人もいる。その人の努力が及ばないところがある。『身のほどを知る』とは、そういうことです」と曽野さん。
「私の体験から言えば、努力が75%で、運が25%くらいの感じです」と。
ふと、こんな話を思い出した。一人の男が大木を伐っていた。朝からずっと必死にのこぎりを引いていたのだ。通りかかった老人が不思議に思って声を掛けた。
「いくらのこぎりを引いても伐れていないのは刃が丸くなっているからです。刃を研いだほうがいいですよ」
しかし、男はこう返した。「今、木を伐るのに忙しいんだ。のこぎりの刃を研ぐ暇なんかない」
どんなに努力しても忙しさにかまけて一番大切なことを疎かにしていると、その努力は報われないという話である。
「のこぎりの刃を研ぐ」とは己の人格を磨くということだ。「身のほど」を知り、心の学びを深め、人間性を高める。そのことで「25%」の運は「40%」にも「60%」にも引き上がる。そんな人は「為せば成る」
近年、身近に起きた自然災害や世界的な規模で進んでいる環境破壊、鳥インフルエンザや口蹄疫などの伝染病、そして昨今の新型コロナウイルス等々、文明を思いのまま発展させてきた人間の英知をもってしても右往左往してしまう諸問題に直面する度、今一度ここに立ち戻ったほうがいいと思うのが「人間の分際」だ。
地球という舞台で人間は我が物顔でやりたい放題やってきた。少し高慢になり過ぎているように思う。恐るべきはもはやウイルスではなく、人間が、人間を超えた何ものかに畏れを抱かなくなったことではないか。そう思う今日この頃である。
私も、いつも、「人間は生き物の中で一番偉い!という奢りを持たないこと」が
大切だと、自然を見ていて思っています。人間の力では「どうにもならない」
災害や自然現象を見たり体験したりすると「そう思う」のです。
人間は「宇宙の一部」「太陽系の一部」「地球の一部」
地図上ではほんの一部でしかなく、鉛筆の「点」でも表現できないほど
「小さな」存在です。人間の力では「何んともできないこと」が起きたら、
人間の傲慢さを「顧みなさい!」というお知恵だと思って、反省したいものです。
災害は、すごいことが起こった?想定外のことが起こった?のではなく、
自然に起こっている出来事の一部なのです。
人間が勝手に「大変なことが起きた?」「予想できないことが・・・?」
と言っているだけすね。
身の程を知り、その中で、精一杯生きましょう!!
できることを精一杯!!
これが、人間のできること!ですね。